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研究室だより Vol.17 小林研究室

非線形力学領域 材料構造工学講座 材料・構造強度学グループ

岩石が衝撃破壊すると電磁波が出る!
— 地震や噴火の予知に? —

小林研究室

 岩石・岩盤から発生する電磁波は、地下資源の探査に古くから利用され、また、地震発生時には強い電磁波がしばしば観測される事から、最近では地震の予知に活用できるのではないかと期待されています。電磁波が発生する原因は、岩石に含まれる石英やトパーズのような圧電物質の周囲の電界が、外部から受ける大きな力で生じる岩石内部の電位差によって変化するため、と言われていますが、本当のところは、まだ、よくわかっていません。

 私たちは、過去に、石英岩、大理石、砂岩の三種類の岩石試験片を用いて衝撃圧縮試験を行い、圧電物質である石英を含む石英岩、砂岩の破壊時に400k~1MHzの周波数を持つ電磁波が観測されるが、石英を含まない大理石では電磁波は観測されないこと[1]を明らかにしました。そこで、この結果を踏まえて、圧電物質である石英の含有量の異なる二種類の岩石を用いて、圧縮試験に加え曲げ試験をも実施し、岩石の機械的性質と負荷速度の関係や、岩石の破壊力学的パラメーターと電磁的現象の関連性について、万能材料試験機やホプキンソン棒型衝撃圧縮試験装置(図1)を使って種々の実験を行いました。その結果、花崗岩,斑レイ岩の圧縮強度・曲げ強度や、岩石の破壊時に観測される電磁波の最大振幅は、ゆっくり圧縮するよりも衝撃的に圧縮する方がより大きく、その現象は石英の含有量が多い花崗岩でより顕著に現れること、特に花崗岩については、その振幅は、図2のように、破壊に対する抵抗が大きい場合ほど大きくなることなどが明らかとなりました[2~4]。

 火山の噴火や隕石の地球への衝突、宇宙空間での星の発生メカニズムである岩石の相互衝突など、岩石の衝撃的な変形や破壊を伴う自然現象は極めて多い。私たちの研究が、このような事象の解明に少しでも役立てばと思っています。

【文献】
[1] Watanabe K., Ogawa K., Tanaka K., Kobayashi H. and Horikawa K., Electromagnetic phenomena associated with dynamic deformation and fracture of rocks, Proc. DYMAT 2009, pp.757-763.
[2] 田中,小川,小林,渡辺,山下,堀川:岩石の衝撃圧縮および曲げ変形における強度と電磁的現象,材料,Vol.58 (2009), pp.910-916.
[3] Kobayashi H., Ogawa K., Horikawa K. and Watanabe K., “Fracture Behavior Accompanying Electromagnetic Waves of Granite in Dynamic Three Point Bending”, J. Solid Mech. Mater. Eng., Vo.5, No.11, pp.873-881, (2011.12).
[4] Kobayashi H., Horikawa K., Ogawa K. and Watanabe K., “Impact Compressive and Bending Behaviour of Rocks Accompanied by Electromagnetic Phenomena”, Philosophical Transactions of The Roy. Soc. A, Vol.372, 20130292, (2014). (http://dx.doi.org/10.1098/rsta.2013.0292)


図1 ホプキンソン棒型衝撃試験装置


図2 き裂進展中の最大応力拡大係数と電磁波の最大振幅との関係

 

Last Update : 2018/03/14

研究室だより Vol.16 杉山研究室

機能デザイン領域 推進工学領域 流体工学グループ

コップの中に見える泡と物理

杉山研究室

 炭酸水やビールなどの発泡飲料に含まれる泡は、飲み物の「のどごし」を決める官能因子です。乾いた喉を潤す手を休め、コップの中をじっくり眺めると、大小様々な物理現象を観ることができます。

例えば、コップにソーダ水を注ぐと、コップの壁についた微細な「キズ」から気泡が発生します。液体に溶けた二酸化炭素が気体となるためです。ソーダ水の気泡はあっという間に500μm程度の直径に成長し、液体と気体との密度差により浮上すると、すぐに飲料の外へと抜けていきます。

溶存気体の種類を変えると、気泡の成長と浮上の様子は別ものになります。左端の図は、窒素が溶解した飲料をコップに注いだ写真です。炭酸飲料と比べて、気泡は寸法が1/10ほど(直径50μm程度)にしか成長せず、ゆっくりと浮上します。無数の気泡が飲料中に長く留まるため、クリーミーな味わいと一緒に、気泡の集団が織りなす模様の動く様を堪能することができます(左から2つ目の図)。私たちはこの「コップの中の模様」を成す流体の動力学を調べ、「味噌汁の模様」とは別の浮力由来のカラクリにより発現することを明らかにしました。

 窒素飲料中の気泡が小さいままに維持されるのは、溶存気体の量や種類が要因です。さらに、飲料に含まれる固形成分などが気液界面に吸着・脱離することに起因した「気泡同士の合体抑制効果」(右端の図)も、要因の一つと考えらます。これらの影響因子について、私たちは実験や数値計算を駆使して調査し、飲料に潜む力学法則を探求しています.

 気泡を含む流れは飲料に限らず、発電施設の熱交換機や水処理施設の水質浄化装置など広く工業的に利用されています。私たちは、基礎研究により得られた知見を活かし、生活を支えるインフラなどの社会基盤技術に貢献する応用研究にも取り組んでいます。

杉山研究室
http://flow.me.es.osaka-u.ac.jp/

 

Last Update : 2018/02/01

研究室だより Vol.15 出口研究室

生体工学領域 生体計測学講座 分子生体計測グループ

細胞が力を感知するメカニズム

−力学環境に依存した細胞機能の謎を解く−

出口研究室

 私たちの体を構成する細胞の機能は「力学環境」に依存して調節されています。
ここで言う力学環境とは、例えば細胞が存在する場所の硬さや3次元微細形状が挙げられます。これらの細胞周囲の力学的な要素から影響を受けて、細胞は形態や構造を変え、かつ細胞機能を担うタンパク質シグナル伝達や、ひいては遺伝子発現が変わります。私たちのグループでは力学解析・計測と分子生物学技術の併用を主たる研究手法として、力学環境の変化に起因する物理的な力の負荷を細胞が感じ取るメカニズム(背後にある物理メカニズム、および責任分子の同定とその活性化メカニズム)の解明に取り組んでいます。

 細胞が力を感知するメカニズムの一つとして、「細胞内収縮力の“設定値”の変化」があります。増殖能を有した多くの細胞種は常に収縮力、つまり自ら縮まろうとする力を発生し続けています。興味深いことに、この収縮力は細胞種ごとにレベルの定まった設定値があります。力学環境の変化に基づき細胞に外力が作用すると、それは細胞というシステムにとっては外乱としてはたらき、細胞内収縮力は元々の設定値からのずれが生じます。細胞はこのずれ、ひいては負荷された外力を感知し、変動の原因となった周囲の力学環境に適応すべく機能的・構造的応答を起こします。

 最近、私たちはこの細胞内収縮力を可視化・定量評価できる技術を開発しました。写真は培養細胞が集団運動を行うときの、個々の細胞内における収縮力の変化を解析したものです。この技術(細胞収縮力アッセイまたはトラクションフォースマイクロスコピーと呼んでいます)を基礎とし、現在はどの遺伝子・タンパク質がどのようにこの細胞内在性力学量の設定値の調節に関与しているかを調べています。また、これらの現象を制御する化合物のスクリーニングに基づく創薬研究にも取り組んでいます。

出口研究室
http://mbm.me.es.osaka-u.ac.jp

Last Update : 2017/03/16