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研究室だより Vol.14 尾方研究室

機能デザイン領域 制御生産情報講座 数理固体力学グループ

金属ガラスの構造若返り現象の解明と制御に成功

脆くなったガラスや磁気特性が変化したガラスを回復させる

尾方研究室

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 金属ガラスは長周期規則構造(原子が規則的にならんだ結晶構造)をもたないランダムに近い原子配列構造を有する金属材料で、高強度、高硬度で広い弾性変形領域と極めてたわみやすい性質をもった特異な金属材料です。また200~400℃程度の比較的低温で水飴のように粘性流動を示すことから、原子レベルでの平滑性をもった精密成形加工が可能であるという特徴も有しています。このような優れた特性から、次世代のスマートフォン等の小型電子端末分野等のケーシング、タッチセンサー、スイッチング、特殊ネジ材料などへの適用が期待されています。

 しかしながら、このような金属ガラスでは、低温での熱履歴や成型加工等によってばらばらに配列した原子が構造緩和し、一部再配列することで脆化するということが問題となっていました。この構造緩和現象はエネルギー的に安定な方向への変化であるため、一旦緩和して脆化した金属ガラスは自発的には元に戻すことはできず、再溶解して一から作り直すしかないと考えられていました。また構造緩和は脆化等の劇的な特性変化をもたらすにもかかわらず、目視はもとより一般的な構造解析(X線回折等)や超音波探傷でも検知することができない微細な現象でした。

 研究グループでは、一旦緩和させて脆化した金属ガラスをガラス構造特有の粘性流動が発現する温度(ガラス遷移温度とよばれ、通常融点の半分程度の温度)直上で極短時間熱処理した後、再度急冷することによって、そのガラス構造を延性に富んだ未緩和構造に逆戻りさせる現象(これを構造若返り現象と呼びます)を実験的に示しました。そして、その現象が起きる機構と条件を分子動力学シミュレーションによって理論的に説明し、その制御指針を構築することに成功しました。

Ref.[1] M.Wakeda, et al., Scientific Reports, 5 (2015), 10545.

  [2]N.Miyazaki, et al., npj Computational Materials 2 (2016), 16013.

尾方研究室
http://tsme.me.es.osaka-u.ac.jp/jp/index.html

Last Update : 2017/02/14

研究室だより Vol.13 平尾研究室

非線形力学領域 材料構造工学講座 固体力学グループ

0.1mm以下の微小な欠陥を検出する非接触電磁超音波センサ

教授:平尾雅彦、准教授:荻博次、特任助教:長久保白

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 原子力発電所や化学プラントでは耐腐食性に優れていることからステンレス鋼が配管などで使われています。ところが、長期にわたって運用していると配管内面の溶接部近傍に応力腐食割れと呼ばれる割れが発生することがあります。このような割れは配管の破断等の深刻な事故につながる恐れがあるため、微小な割れをできるだけ早期に発見する技術が必要になります。

 割れの検査にはしばしば超音波が使われます。配管の外側から内側に向けて超音波を入射すると、内面の割れで超音波が散乱・反射されるので、反射・散乱した超音波を測定して割れの有無や大きさを推定します。この検査では一般に圧電体を使った超音波センサが利用されます。振動するセンサを接触媒質を介して配管に押し付けて超音波を伝えますが、押し付け強さなど検査員の技量によって結果が変わることがありました。この問題を解決するべく、我々の研究室では点集束型の電磁超音波センサを開発しました。これは電磁気的な作用を利用して試験体の表面を振動させる非接触のセンサであり、試験体への押し付け方に影響を受けません。また、超音波は材料中を広がりながら伝ぱするため、伝ぱ距離が長くなるほど音圧が小さくなりますが、開発したセンサでは複数の音源から超音波を発生させ、それを材料内部の一点(焦点)で収束させることで音圧の低下を防いでいます。さらに点集束の効果で焦点付近での空間分解能が高められています。結果として、割れの検査をしたことがない人であっても再現性良く割れの検査ができるようになり、深さが0.05mmの人工欠陥も有意に検出することに成功しました。このように、非破壊検査の分野に貢献する超音波センサの開発に取り組んでいます。

平尾研究室
http://www-ndc.me.es.osaka-u.ac.jp/pmwiki/pmwiki.php

Last Update : 2017/01/06

研究室だより Vol.12 和田研究室

生体工学領域 生体機械科学講座 バイオメカニクスグループ

医学と工学をむすぶ生体力学シミュレーション

教授・和田成生、講師・越山顕一朗、特任准教授・伊井仁志

kentayori_v12 当研究室では、生体計測と様々な計算力学シミュレーションを組み合わせて、細胞から組織、器官に至る生体のマルチスケールな物理現象とそれに関わる生物 現象を統合的に理解する研究を行っています。これにより、生体の機能発現の基礎となる力学特性だけでなく、生体特有の力学的適応現象やリモデリングのメカ ニズムの解明を目指しています。また、得られた知見をもとに、病気の診断や治療、進行予測に生体力学シミュレーションを活用する新しい医療支援システムの開発を行っています。
 今回紹介するのは、血液の主成分である“赤血球”の膜破断に関する分子シミュレーション研究です。赤血球は心臓を出発して肺で酸素を獲得して心臓に戻り、次に全身を回って酸素を体の至る所に輸送して心臓に戻り,再び肺へと出発する循環をしています。赤血球の通過する血管は狭いところではそのサイズよりも小さく、また循環中に血流は様々に変化します.このため,循環中に赤血球は様々な力学的負荷 (つぶされたり、ひっぱられたり)を受けます。時には、過度な力学的負荷によって赤血球を覆う膜が破れて内容物がでてしまう“溶血”が生じます。溶血は、特に弱くなった心臓の働きを補助するための医工学技術の一つである補助人工心臓ポンプの設計において問題となります。しかし、溶血はナノ(10-9)メートルサイズの膜のナノ秒での構造変化を伴うため、通常の実験装置などでは観察することができません。そこで、我々は膜の構造変化を分子レベルで追うことが可能な生体膜分子動力学シミュレーションを利用して研究を進めています。最新の研究では、赤血球膜の主成分の一つであるコレステロールが力学的負荷下での膜構造変化に与える影響を分子レベルで詳細に明らかにしています(図参照)。

図:力学負荷前後のコレステロールを含む生体膜分子モデルの側面図。力学負荷によって二重層構造から組み込み一重層構造への相転移が観察される。

和田研究室
https://sites.google.com/site/biomechwadalab/

参考論文
http://www.nature.com/articles/srep15369

Last Update : 2016/04/26