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研究室だより Vol.25 垂水研究室

【非線形力学領域・垂水 竜一 教授】

材料科学と電磁気学の共通法則を発見
-柔らかい幾何学を用いた材料科学の新しい理論-

・結晶材料の欠陥(転位(※1))が生み出す歪みのパターンは、電流の周りに作られる磁場と同じ方程式に従うことを発見

・電流の磁場を説明するビオ・サバールの法則を材料科学へ応用することで、転位による塑性変形の歪みのパターンを解析的に決定することができる

・全ての結晶材料の強度や延性を記述するための基礎理論として、広範な応用が期待される

大阪大学大学院基礎工学研究科 小林舜典助教、垂水竜一教授らの研究グループは、結晶の中にある「転位」という欠陥が生み出す結晶格子の歪みのパターンが、電流が作り出す磁場のパターンと同型になることを発見しました。

転位は、結晶材料の強度と柔軟性を決める重要な欠陥の一つですが、その力学的な性質に関する理論研究は十分進んでおらず、多くの研究課題が残されていました。

今回、研究グループでは、①転位の周りに作られる塑性変形(物体に外力を加えて変形させ、その後、外力を取り去っても残る変形)による歪みのパターン(カルタン方程式)が、定常電流の周りに作られる静磁場のパターン(アンペール・ガウス方程式)と一致すること、そのため②アンペール・ガウス方程式の解であり、電流の磁場を説明するビオ・サバールの法則が、カルタン方程式の解として転位の歪みのパターンにも適用できること、③この性質が図に示す3種類のすべての転位に対して成り立つこと、を示しました。またこれらの結果が、④複素関数論におけるコーシー・リーマン方程式と一致することも示しました。これらの結果から、⑤結晶の欠陥と電磁気学という異なる物理現象が、同じ数学的な原理に基づいていることがわかりました。この背後には、等角写像と呼ばれる機構が深く関わっていることを結論付けました。

本研究成果は、2025年3月5日(水)0時5分(グリニッジ標準時)、日本時間2025年3月5日(水)9時5分に英国王立協会誌「Royal Society Open Science」より公開されました。


詳細は大阪大学ホームページ(ResOU)をご参照ください。

 

【用語説明】
(※1)転位
結晶に見られる原子配列の乱れの一種。結晶の塑性変形は、特定の結晶面の間の相対的なすべり運動によって生じるが、すべりを起こした領域と未すべりの領域の境界線を転位と呼ぶ。すべり面上に伸びた一次元曲線形状を有しており、数学的にはトポロジカル欠陥の一種と考えることができる。

Last Update : 2025/04/18