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研究室だより Vol.24 出口研究室

【生体工学領域・出口 真次 教授】

細胞老化と若返りを制御する新たな分子メカニズムを発見―
抗老化技術の開発につながる可能性―

細胞老化(左→右)に伴い形態や内部骨格構造が変化.
本研究ではそのメカニズムの一端を明らかにした.

・老化した細胞(線維芽細胞(※1)・上皮細胞(※2))で、タンパク質AP2A1(アダプタータンパク質2アルファ1サブユニット)(※3)の発現量が増加することを発見した。
・細胞が老化すると、細胞が大きくなることや、ストレスファイバー(細胞骨格)が太くなることが知られていたが、その仕組みは不明だった。
・線維芽細胞においてAP2A1が、老化に伴い肥大化する細胞構造に寄与する可能性を示唆。
・線維芽細胞においてAP2A1の発現を抑制すると、従来の老化マーカーの減少を含む多様な細胞若返り現象が観察された。
・AP2A1は、細胞老化を示す新規マーカーおよび加齢関連疾患の治療標的となる可能性が示唆された。

 

大阪大学大学院基礎工学研究科のPirawan Chantachotikul特任研究員と出口真次教授(国際医工情報センター、エマージングサイエンスデザインR3センター兼務)らの研究グループは、細胞老化に関連する新たな分子メカニズムを明らかにしました。

細胞が老化すると、細胞が大きくなることや、ストレスファイバー(細胞骨格)が太くなることが知られていましたが、その仕組みは不明でした。
本研究では、AP2A1(アダプタータンパク質2アルファ1サブユニット)が、老化に伴い肥大化する線維芽細胞の構造の維持に不可欠な役割を果たしていることを見出しました。また、AP2A1が上皮細胞の老化にも関係することを明らかにしました。

この成果は、抗老化薬など老化を遅延させて健康寿命を延ばす技術や、加齢関連疾患の治療法の開発につながる可能性があります。

本研究の成果は、国際誌Cellular Signallingに2025年1月21日(火)に公開されました(オープンアクセス)。

詳細は大阪大学ホームページ(ResOU)をご参照ください。

本論文第一著者であるPirawanさん(写真中央・機能創成専攻修了)の論文採択を祝して(出口教授は左から2番目・Pirawanファンの3人と共に)

 


【用語解説】
(※1)線維芽細胞
皮膚や臓器を支える細胞で、コラーゲンなどの細胞外基質タンパク質を作り出し、組織の構造を維持します。年齢とともにそのはたらきが低下して老化が進行すると、組織の修復能力などが損なわれ、皮膚や臓器の機能低下を引き起こす要因となります。

(※2)上皮細胞
乳腺などの腺組織や、消化管・気道の上皮を構成する細胞。組織の保護や物質の吸収・分泌に関与し、外部環境との境界を形成しています。老化に伴いその機能が低下すると、組織の恒常性維持が困難になり、バリア機能の低下や慢性炎症を引き起こす可能性があります。
(※3)AP2A1(アダプタータンパク質2アルファ1サブユニット)
細胞が外部から物質を取り込む仕組み(エンドサイトーシス)に関わるタンパク質です。本研究では、AP2A1が老化に伴う細胞構造の再構成に深く関係していることを見出しました。

Last Update : 2025/04/18