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研究室だより Vol.9 杉山研究室

機能デザイン領域 推進工学講座 流体工学グループ

気液界面を有する流れの研究

教授・杉山 和靖,准教授・堀口 祐憲,助教・米澤 宏一

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液体の流れの中では,流れ方に応じて圧力に分布ができます.圧力が飽和蒸気圧よりも低くなると,気泡が発生します.この現象をキャビテーションと呼びます.キャビテーションは,高速で運転される流体機械,装置で発生し,性能劣化,振動・騒音,壊食の原因となります.キャビテーションは,19世紀末に発見されて以来,多くの研究者によって研究されてきましたが,未だ,予測が極めて難しい現象です.理由には,(i) 分子スケール (nm) から,気泡のスケール (μm~mm),機器のスケール (mm~m) に至るまで,多重のスケールの動力学が関係すること,(ii) 気液の混在する多相流れであり,キャビティ界面が複雑に変形することが挙げられます.特に後者に関して,泡だらけな状態 (図(a)) になると,流れ方が変わり,機械/装置に働く流体力が変わります.その結果,設計どおりの性能が発揮できなくなるばかりでなく,望まない振動を引き起こし,危険な状態に至る場合があります.安全面での想定外を無くすには,事前に現象を忠実に,包括的に捉えること,さらに,現象の本質を引き出し,単純化したモデルを築くことが重要です.そうすることで初めて,問題を理解し,問題に取り組むことにつながるからです.私たちは,例えば,翼面キャビテーションの動特性に着目し,流量変動に対するキャビティ界面の応答などを,実験や数値シミュレーションによって調べています.
液中の気泡は,害になるばかりでなく,有益な特性を示す場合があります.特に,径の小さなマイクロバブルには,超音波医療画像の鮮明化を実現するセンサ機能や,音響エネルギの集束や乱流の抑制・促進を実現するアクチュエータ機能があります.私たちは,複雑な界面運動を予測する計算手法 (図(b)) を開発するとともに,マイクロバブル流れの機能を上手く使いこなすための研究にも取り組んでいます.

図(a): インデューサに生じるキャビテーションの実験.図(b): チャネル内気泡流

Last Update : 2015/08/17

研究室だより Vol.8 小林研究室

非線形力学領域 材料構造工学講座 材料・構造強度学グループ

破壊に伴って固体材料から放出されるガス元素の動的可視化
~質量分析計と高速度マイクロスコープを備えた超高真空材料試験装置の新開発~

教授 小林秀敏,准教授 堀川敬太郎,助教 谷垣健一

当研究室では、固体材料が環境から水素を吸蔵した際の材料の破壊現象を明らかにする研究を行っています。現在、将来的な化石燃料の枯渇にも対応できるように、燃料電池などに代表されるように、水素エネルギーを有効に活用する手法の開発が国内外で行われています。水素を貯蔵・運搬したりする部品材料には、金属材料が広く用いられております。ところが、金属材料は水素が吸蔵されると、材料の種類によって程度の違いはあるものの、壊れやすくなる(もろくなる)性質があります(水素脆化現象)。したがって、水素エネルギーシステムを将来的に構築するためには、現段階から材料が水素と接触した場合に、材料特性がどのように低下するか、あるいはその特性低下を防ぐ対策を確立させておくことが重要です。水素は全原子の中でも最もサイズが小さく、また固体の中での移動(拡散)が速く、影響を与えうる水素自体は僅かの量(ppmオーダー以下)である、ことなどもあって、水素脆化現象を生じさせている時の水素の挙動を明らかにすることがこれまで困難となっておりました。kentayori_v08本研究では、その未解明の部分を明らかにすることを目的として、水素脆化現象が生じた際の水素放出と組織変化を可視化できる世界唯一の材料試験装置を新たに開発しました(図1)。この装置は超高真空環境(10-8 Pa)の中で金属材料を引張変形・破断する際に放出されるガス元素を高感度の四重極質量分析計で高速で検出(質量数1~400を1秒)しながら、材料表面の損傷をマイクロスコープで高速サンプリング(写真コマ数2000枚を1秒)することができます。破壊時の水素関連ガス放出の情報と材料損傷の組織変化の情報を同期させることが可能になりました。この装置を用いることで、環境から取り込まれた水素原子が材料組織の中でどの場所にどの程度の量集積することで水素脆化を生じさせているか、といった、これまで未解明の部分が判り始めています。

材料・構造強度学研究室 http://fracmech.me.es.osaka-u.ac.jp/

Last Update : 2015/07/14

研究室だより Vol.7 川野研究室

機能デザイン領域 分子流体力学グループ 川野研究室

マイクロ・ナノ空間におけるイオン流動現象

教授・川野聡恭,准教授・土井謙太郎,助教・花﨑逸雄,助教・辻徹郎

陽イオンと陰イオンが電極間を移動することによりエネルギーが生み出される原理は,身近なところでは電池としてよく知られています.近年,微細加工技術の発展により,マイクロ・ナノスケールにおけるイオン流動現象を利用した電池やキャパシタの開発が盛んに行われています.微小空間において無駄の少ないイオン輸送を実現することにより,高エネルギー密度やジュール発熱の抑制が実現され,低消費電力デバイスへの応用が期待されます.

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我々は,電解質溶液におけるイオンの振る舞いを分子流体力学の立場から眺め,非平衡のイオン流動現象を理論と実験の両面から研究しています.たとえば,右上図に示すように,微小な対電極が設置された液溜めを塩化ナトリウム水溶液で満たし,そこに電圧を印加すると過渡的なイオン電流の応答が見られます.微小電極を用いることで非常に微弱な応答を検出することも可能です.理論的には,電極に電位差が生じた瞬間にその近傍にあるイオンが応答して電極表面を遮蔽するとともに,電場の変化に追従して広範囲にイオンの平衡分布が乱されるためだと考えられます.右下図に示すように,ノイズを含むイオンの応答特性が理論モデルにより再現され,電圧印加直後の電極表面の遮蔽による急峻なイオン電流の立ち上がりと,引き続く広範囲の応答による緩やかな減衰が見られます.この結果は,現実の時空間スケールをよく説明しています.

他方で,一分子を計測する技術が飛躍的に発展してきており,微小電極を用いてDNA(デオキシリボ核酸)の塩基分子を識別しようといった研究が進められていますが,そこにも我々の研究成果が貢献しています.

研究内容の詳細やその他の研究テーマについての説明は当研究室のホームページをご覧ください.

川野研究室ホームページ http://bnf.me.es.osaka-u.ac.jp/

Last Update : 2015/06/15