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研究室だより vol.4 川野研究室

機能デザイン領域 分子流体力学グループ 川野研究室

分子流・プラズマ流の数理と応用
―ナノデバイスから医療応用まで―

教授  川野 聡恭,准教授  土井 謙太郎,助教  花﨑 逸雄,助教 辻 徹郎

電子・イオン・分子の運動やプラズマ流(電離気体流)における数理物理的普遍性の究明と先端工業 技術への応用に関する研究を行っています. 従来の流体力学理論の枠組みでは取り扱うことが困難であったマイクロ・ナノスケールの荷電粒子流および分子の特異的な集団挙動を理論と実験の両面から探究します.これらの基礎的知見と数理解析技術を融合し,環境エネルギー関連機器や微小医療デバイスの設計指針を確立することによって,学術のさらなる深化と 直接的な社会貢献を目指します.

ナノ流路内における一分子観察

近年,DNAの塩基配列を短時間低コストで解読するDNAシーケンサの開発に注目が集まっています.将来は,個人レベルでのDNAの解析が行われ医療などへ応用されることが期待されています.当研究室では,このDNAの次世代解析技術につながる,微小構造内における高分子の一分子計測を行っています。 当研究室ではMEMS(Micro Electro Mechanical System)と呼ばれる、微小構造物の作成技術を用いて,深さが数百nmのナノ流路を作成しました.この流路内にλDNAを流入し,電圧を印加すると電気泳動する様子が蛍光顕微鏡によって観察されました。λDNAは,流路壁面による拘束を受け、流動速度が減少することが確認されました.さらに拘束による影響は,流路の深さが狭いほど顕著に現れることが確認されました.単一分子を取り扱うデバイスにおいては,このような微小空間内で高分子流動の解析が有用であると考えられます.

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図 蛍光可視化観察によるλDNA

川野研究室ホームページ http://bnf.me.es.osaka-u.ac.jp/

Last Update : 2013/08/27

研究室だより vol.3 尾方研究室

TSME(Theoretical Solid MEchanics; 数理固体力学グループ)

尾方研究室 原子レベルスローダイナミクスシミュレーション
ー固体中の原子レベルの長時間現象の理解にむけてー

教授:尾方 成信,准教授;君塚 肇,助教:譯田 真人

結晶金属やガラスなど、固体材料は我々の身近にある工業製品に広く使われています。固体材料の構造や性質は様々であり、これらを原子レベルから理解することは、性質の改善や新たな材料の開発につながります。本研究室では原子シミュレーション手法を用いて、固体材料の中で起きる原子レベルの現象について研究を行っています。 原子シミュレーションでは個々の原子の運動を扱います。このため、多くの原子を含む大きな空間スケールで起きる現象や長い時間スケールで起きる現象を調べるのに困難を伴います。この課題の克服を目指して、本研究室では長い時間スケールで起きる現象を扱うことのできる新たなシミュレーション手法の開発に取り組んでいます。開発した手法を用いることで、従来の原子シミュレーションでは扱うことができなかった、極めて長時間の現象を原子レベルから理解することが可能となります。図は鉄中の炭素原子の拡散の原子シミュレーションで、低温でのゆっくりとした拡散も精度良く求めることが可能です。 原子シミュレーションの時間スケールの制約のため解明が進んでいない固体材料中の現象は多くあります。このような現象を原子レベルから解明することは、学術的に意味があるだけではなく、産業分野への大きな貢献が期待できます。

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尾方研究室ホームページ
http://tsme.me.es.osaka-u.ac.jp/

Last Update : 2013/06/26

研究室だより vol.2 和田研究室

バイオメカニクスグループ(和田研究室)

医学と工学をむすぶ生体力学シミュレーション

教授・和田成生、准教授・宮崎 浩、助教・越山顕一朗、伊井仁志

当研究室では、生体計測と様々な計算力学シミュレーションを組み合わせて、細胞から組織、器官に至る生体のマルチスケールな物理現象とそれに関わる生物現象を統合的に理解する研究を行っています。これにより、生体の機能発現の基礎となる力学特性だけでなく、生体特有の力学的適応現象やリモデリングのメカニズムの解明を目指しています.また、得られた知見をもとに、病気の診断や治療、進行予測に生体力学シミュレーションを活用する新しい医療支援システムの開発を行っています。図Aは医用画像と計算力学解析を統合する肺呼吸のイメージベーストシミュレーションの結果です。CT画像から肺や気道の実形状モデルを構築し、吸気時の酸素輸送計算を行いました。計算結果を元の医用画像上に表示しています。このように医用画像に物理的情報を加えることにより、より高度な診断が可能となると考えられます。また、これに肺胞から構成される肺の微細構造を表現する数理モデルやエネルギ最小化原理に基づく細胞の力学モデルを組み合わせることにより、肺のマルチスケールメカニクスの解析に取り組んでいます(図B)。

図Cは血液循環のマルチスケールシミュレーションの結果です。補助人工心臓ポンプ内の血液の流れとそれによる赤血球の変形動態を表しています。このように赤血球は急激に過度の変形をすると、膜が破壊(溶血)してしまいます。 変形に伴う赤血球膜の破壊メカニズムの詳細を明らかにするために、分子動力学シミュレーションを取り入れた研究も行っています(図D)。詳細は当研究室のホームページ(http://sites.google.com/site/biomechwadalab/home)をご覧下さい。

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図A: CT画像から得られた肺および気道の実形状モデルと気道内の酸素輸送計算結果.
図B: 肺の微細構造モデルと力学計算によって得られた肺組織と細胞の変形の様子.
図C: 補助人工心臓内を流れる赤血球の変形動態.
図D: 分子動力学計算によって得られた急激な伸展による赤血球膜の破壊の様子.

Last Update : 2012/07/12